こんにちは、アロマ薬剤師のふみやです。今回は【アロマテラピーの注意事項】間違った使い方をすると逆効果になるをご紹介していきたいと思います。
心地よい香りで癒しを与えてくれるアロマテラピーですが、しっかりとアロマオイルの特性を理解しないと、ご自身が期待する効果と逆の作用をしている可能性があります。アロマテラピーを学びはじめた方にオススメの記事になっていますので、ぜひとも読んでみてください。
アロマテラピーに効果がある理由とは
嗅覚だけが「ダイレクトに脳に伝わる感覚器」
五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)のなかで、嗅覚だけは脳の中にある大脳辺縁系に直接伝わります。大脳辺縁系は好き嫌いなどの「感情」、食欲や睡眠欲など「本能」に深く関与しており、それらの行動に影響を与えます。また大脳辺縁系には海馬があるため、嗅覚の刺激によって「記憶」にも作用することがわかっています。
たとえば、
面識のなかった人の匂いを嗅いだだけで、「この人好き!」「この人嫌い!」などと、無意識に判断したことはありませんか?中身は全然知らないけれど、なぜか好きなんだよね、と思ったりしたことがあれば、嗅覚のせいかもしれません。
記憶に関しても、
ふとしたきっかけで、ある香りを嗅いだ時、当時の記憶が鮮明に思い出されることはないでしょうか?これも嗅覚が、大脳辺縁系の海馬と密接に関係しているからとも言え、認知症の患者さんに対して、アロマテラピーを行った際に認知機能が改善されたという報告があります。
他の感覚器も大脳辺縁系に伝わりますが、嗅覚の大脳辺縁系に伝わるスピードが非常に早く、かつダイレクトに伝わるため、「感情」「本能」「記憶」に多くの影響をもたらします。また大脳辺縁系の近くには視床・視床下部があり、嗅覚からの情報が伝わることで、自律神経系、免疫系、内分泌系へも作用します。そのことによって自律神経やホルモンバランスの乱れを整えたり、免疫力アップにも影響を及ぼすのです。これらの作用は日本国内や海外のアロマテラピーの研究においても、数多くの報告があります。
アロマテラピーの心身に対する影響とは?
アロマオイルの特性を理解する必要性として、京都府立医科大学と明治国際医療大学附属統合医療センターが行なった研究をご紹介したいと思います。この研究では心を落ち着かせ鎮静作用が期待される香りのアロマオイルと、頭をスッキリさせるなど覚醒作用が期待される香りのアロマオイルを使うことで、身体にどのような影響が現れるかを検討しています。
研究内容
鎮静作用が期待されるアロマオイル(ラベンダー・アングティフォリア2.5%+ゼラニウム2.5%)、覚醒作用が期待されるアロマオイル(ペパーミント2.5%+レモングラス2.5%)、アロマオイルを使わない3つの群でハンド・フットマッサージを30分間実施し、心身に与える効果を比較検討した(検討事項:HF値、LF/HF比、唾液中コルチゾール、心理質問表)。
HF値
0.15〜0.4Hzの周波帯のパワースペクトル。この値は副交感神経の活動(鎮静しているか)を反映しています。
LF/HF比
LF(低周波)とHF(高周波)のパワーの比率。この値は交感神経と副交感神経の全体のバランスを表しています。数値が高いと交感神経優位(覚醒している)を示しています。
研究結果
鎮静作用が期待されるアロマオイル
ラベンダー・アングティフォリア2.5%+ゼラニウム2.5%を使ってマッサージを行った群において、HF値の上昇、LF/HF値が低下した。またアロマオイルを使わない群に比べ、否定的感情を示す得点が大きく低下した。
覚醒作用が期待されるアロマオイル
ペパーミント2.5%+レモングラス2.5%を使ってマッサージを行った群において、HF値の低下、LF/HF値が上昇した。またアロマオイルを使わない群に比べ、肯定的感情を示す得点が大きく上昇が認められ、他の2つの群に比べ疲労度が最も低下した。
アロマテラピーには効果があるからこそ注意が必要
ご紹介した研究では、鎮静作用の期待できるアロマオイルを使用すると、副交感神経の活動が活発になり、否定的な感情が少なくなる一方で、覚醒作用の期待できるアロマオイルを使用すると交感神経の活動が活発になり、肯定的な感情が高くなり疲労が低下しました。
この結果からわかるようにアロマテラピーには心身に対する効果があり、鎮静作用のあるアロマオイルと、覚醒作用のあるアロマオイルの使う場面を間違えてしまうと、期待する効果の逆の作用が出てしまうことがあるということです。しっかりとアロマオイルの特性を理解して、時間や場面に合わせて香りを使う必要があるのです。
「仕事を頑張るぞ!」と思った時に、鎮静効果のあるアロマオイルを使うと、リラックスしてしまって仕事がはかどらない。「ゆっくり休みたい」と思った時に、覚醒作用のあるアロマオイルを使うと、落ち着かない。そのようなことが起こり得るのです。
鎮静作用のあるラベンダーやゼラニウムなどを使う
副交感神経を活発化させる働きによって、不安な気持ちやストレスを癒すリラックス効果や、心地よい眠りをサポートしてくれる効果があります。そのため落ち込んだときのストレスケア、仕事終わりの気分転換、寝る前のリラックスタイムなどに使うと良いでしょう。
ラベンダー・アングスティフォリア
「ラベンダー・アングスティフォリア」は真正ラベンダーともよばれ、最もラベンダーらしい香りから多くのひとに親しまれているアロマオイルです。リナロールや酢酸リナリルの成分を多く含み、それらの成分は心身を落ち着かせる作用に優れています。ストレスを感じたときや、眠れない夜に使ったりと幅広い用途で使用されます。柑橘系のアロマオイルと香りの相性も良いのでブレンドすることもオススメです。
ゼラニウム
「ゼラニウム」はバラのような甘い香りを持つことから、ローズゼラニウムともよばれます。ゲラニオールやシトロネロールには優れた鎮静作用があり、優しい香りが憂鬱な気分を忘れさせてくれます。スキンケア化粧品などにも使用されることからリラクセーションに効果的で、ストレスケアなどに活躍してくれるアロマオイルです。
覚醒作用のあるペパーミントやレモングラスを使う
交感神経を活発化させる働きによって、元気を引き出してくれたり、疲れを忘れさせてくれる、モチベーションを上げてくれる効果などが期待できます。そのため仕事を頑張らないといけないときや、集中して勉強をしたいときに使うことが効果的です。
ペパーミント
「ペパーミント」は甘さの中に清涼感をもつ、爽快感のある香りの代表的なアロマオイルで、モノテルペンアルコール類を多く含むため、心身を前向きに強化してくれます。馴染みのある香りからガムや歯磨き粉などにも使われているため、みなさんもイメージしやすいのではないでしょうか。仕事や勉強を頑張りたいときや、リフレッシュに使うことがオススメです。
レモングラス
「レモングラス」は爽やかな甘いレモンのような香りが特徴のアロマオイルで、タイのトムヤンクンなどにも使用されています。集中力アップや記憶力アップにも効果的で、認知症患者さんの認知機能を改善する研究が発表されているほどです。覚醒させる作用と、鎮静される作用の両面を持っていて、極度の緊張を鎮めてくれる作用もあります。疲れを感じたときなどにオススメです。
アロマオイルの特性・効果を理解するオススメの勉強法
アロマテラピー協会のスクールに通う
アロマテラピーをしっかりと学びたい考えている方は、アロマテラピー協会のスクールに通うことをオススメします。アロマオイルの特性や効果をはじめ、アロマテラピーの知識を習得できるとともに「アロマテラピー資格」「アロマセラピスト資格」なども取得が可能です。日本に拠点をおいているNARD(ナード・アロマテラピー協会)、AEAJ(日本アロマ環境協会)、JAA(日本アロマコーディネーター協会)の3つが主な協会になります。
メリット
- アロマテラピーの基礎から応用までをしっかりと学べる
- 資格を取得ができ、就職に有利になる
デメリット
- 費用が10万円以上かかることがある
- スクールに通う手間がある(オンライン受講もあります)
こんな方におすすめ
- アロマテラピーを仕事として取り入れたい
- 自分自身や家族が困っていることに、アロマテラピーを役立てたい
各アロマテラピースクールに関しては、こちらを参考にしてみてください→アロマテラピー検定・資格の違い〜アロマテラピー協会の特徴まとめ〜
ユーキャン講座を申し込む
AEAJ(日本アロマ環境協会)が行っているアロマテラピー検定を、ユーキャンで学習することができます。独学でも資格の取得は可能ですが、ユーキャンで申し込むとオリジナルテキストでわかりやすく、勉強しながらアロマテラピーのクラフトも体験できるので、独学よりアロマテラピーに触れながら学ぶことができます。
メリット
- イラストやDVDなど豊富なサポートツールがあるため視覚的に学びやすい
- スクールに通うより価格が安い
デメリット
- スクールに通うより知識量が少ない
- 先生や生徒との交流がなく、つながりができない
こんな方におすすめ
- 自宅でアロマテラピーを使うために勉強したい
- 気軽にアロマテラピーを楽しみたい
いかがだったでしょうか?
「【アロマテラピーの注意事項】間違った使い方をすると逆効果になる」をご紹介させていただきました。皆さんが正しくアロマテラピーを取り入れるためにお役に立てると嬉しいです!アロマテラピーにはさまざまな効果がありますので、アロマオイルの特性を理解しながら、アロマテラピーを楽しんでみてください。
参照:女性心身医学JJpSocPsychosomObstetGynecol Vol16,No3,pp.268− 282「鎮静 ・覚醒作用のある精油を用いたハンド・フットマッサージの健常成人女性の心身に及ぼす効果」