こんにちはアロマ薬剤師のふみやです。今回は【アロマオイルの作用を成分で理解する】芳香分子の効能一覧表をご紹介したいと思います。
アロマオイルを購入するときに成分名が書いてあるけど、どんな作用があるかわからない…。そのような経験をされた方も多いのではないでしょうか?オーガニックの有効成分が詰まったアロマオイルの作用を理解するためには、それぞれの有効成分の特性を知っておくことが大切です。アロマオイルの有効成分である「芳香分子」の代表的な作用をご紹介しますので、ぜひ読んでみてください。
アロマオイルに含まれる有効成分とは?
アロマオイル(精油)とは、芳香植物から抽出した香りのする有効成分の集合体です。たとえばミントを手にとると、スーッとした爽やかな香りがするのは、メントールとよばれる有効成分が香りのもとになっているためです。メントールなどの有効成分が集められたものが、ペパーミントのアロマオイルであり、アロマテラピーではそれらの有効成分を”芳香分子”と呼んでいます。
余談ですがミントを手のひらでパンっと叩くと香りが立ちます。これはミントの表面にある線毛に芳香分子が蓄えられていて、叩くことによって線毛が破れることで、芳香分子が外に出てくるためです。大葉でも同じように手のひらで叩くと香りが立ちますので、よかったら試してみてください
植物ななぜ芳香分子を作るのか?
正しい理由はわかっていませんが、受粉を助ける昆虫などを引き寄せるため、動物から食べられないようにするため、抗菌・防虫のため、抗酸化作用としてなど、さまざまな理由が考えられています。そのオーガニックの”力”を有効活用するアロマテラピーは、人の魅力を増したり、リラックスさせてくれたり、感染症予防や菌の繁殖抑制、虫除けなどを目的として用いることは、納得できる作用と言えるのではないでしょうか?
芳香分子は芳香成分類とよばれるグループに所属しており、芳香成分類にも効能・効果があります。詳しい芳香分子と芳香成分類の違いや、それぞれの作用を知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください→【アロマオイルの成分で効能•効果を見分ける】12種類の芳香成分類一覧
アロマオイルを成分で理解する〜芳香分子の効能一覧表〜
ここでは芳香分子の効能・効果についてご紹介したいと思います。アロマオイルは産地や収穫時期によっても含有成分が異なります。そのため芳香分子を理解しておくと、目的に合ったアロマオイルを購入することができるのです。
アロマオイルは医薬品ではありません。下記に記載している作用は、研究報告などをもとに効果が期待されると考えられています。
モノテルペン炭化水素類
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
δ-3-カレン | 鎮咳作用 | アカマツ•ヨーロッパ、サイプレス、バルサムモミ、ブラックスプルース、ペッパー |
テルピネン | 静脈強壮作用、うっ滞除去作用 | ティートゥリー、マジョラム、ワームシード、アジョワン、オレガノ、クミン、タイム、ベルガモット、レモン |
サイメン | 鎮痛作用 | アジョワン、ウインターセボリー、オレガノ、タイム、タナセタム、マジョラム |
ピネン | 強壮作用 | アカマツ•ヨーロッパ、アンゼリカ、コリアンダー、サイプレス、シナモン、ジュニパー、タイム、ニアウリ、ブラックスプルース、フランキンセンス、ペッパー、ヘリクリサム、ユーカリ、ラヴィンツァラ、ローズマリー、ロックローズ、ワイルドキャロット |
フェランドレン | 鎮咳作用 | アンゼリカ、エレミ、タナセタム、ユーカリ |
ミルセン | 肝臓強壮作用、腎臓刺激作用 | アカマツ•ヨーロッパ、アンゼリカ、タイム、タナセタム、フランキンセンス |
リモネン | 肝臓強壮作用、腎臓刺激作用、蠕動運動促進作用、血圧降下作用 | アカマツ•ヨーロッパ、アンゼリカ、エレミ、カユプテ、キャラウェイ、ジュニパー、スペアミント、ディル、ネロリ、フェンネル、フランキンセンス、ペッパー、ユーカリ、リトセア、レモングラス、レモンバーベナ、オレンジスイート、オレンジビター、グレープフルーツ、セロリ、ベルガモット、マンダリン、ライム、レモン |
セスキテルペン炭化水素類
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
エレメン | 鎮痙攣作用、抗炎症作用 | カタフライ |
カマズレン | 抗アレルギー作用、抗炎症作用、鎮掻痒作用、皮膚組織再生作用 | カモマイルジャーマン、タナセタム、ヤロー |
ジンギベレン | 催淫作用、消化促進作用 | ジンジャー |
セスキフェランドレン | 鎮咳作用 | ジンジャー |
コパエン | 抗炎症作用 | カタフライ |
セドレン | リンパ強壮作用、うっ滞除去作用 | サイプレス、シダー |
ヒマカレン | リンパ強壮作用、うっ滞除去作用 | アトラスシダー、ヒマラヤスギ |
ブルネセン | リンパ強壮作用、うっ滞除去作用 | パチュリー |
カマズレンには優れた抗アレルギー作用とかゆみを抑える作用があり、古くからアレルギー性皮膚炎などに対して用いられてきました→【アトピーを癒すアロマオイル】4種類のレシピが原因とかゆみに効果的
モノテルペンアルコール類
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
ゲラニオール | 鎮痛作用、興奮作用、皮膚収斂作用、抗不安作用、皮膚弾力回復作用、子宮収縮作用 | シトロネラ、ゼラニウム、タイム、パルマローザ、レモングラス、ローズ |
シトロネロール | 昆虫忌避作用、鎮静作用、筋肉弛緩作用、血圧降下作用、 | シトロネラ、ゼラニウム、ユーカリレモン、ローズ |
ツヤノール | 肝臓強壮作用 | タイム、マジョラム |
テルピネオール | 神経強壮作用、誘眠作用、抗炎症作用、皮膚収斂作用 | カユプテ、タイム、ニアウリ、プチグレン、ユーカリ、ラヴィンツァラ |
テルピネン-4-オール | 副交感神経強壮作用、鎮痛作用、鎮静作用、抗炎症作用、免疫調整作用 | ジュニパー、タイム、ティートゥリー、ナツメグ、マジョラム |
ネロール | 皮膚弾力回復作用 | プチグレン、ローズ |
ボルネオール | 胆汁分泌促進作用、免疫調整作用 | イヌラ、シトロネラ、タイム、ローズマリー |
メントール | 血管収縮作用、鎮痛作用、肝臓強壮作用、筋肉弛緩作用 | アルベンシスミント、ペパーミント |
リナロール | 鎮静作用、血圧降下作用、抗不安作用、疲労回復作用 | イランイラン、クラリセージ、ジャスミン、ゼラニウム、タイム、ネロリ、バジル、プチグレン、ベルガモット、ホーウッド、ラベンダー、ローズウッド |
ローズがスキンケアに好まれるのは、ゲラニオールやネロールによる作用だとも考えられています。リラックス効果を持った代表格でもある、テルピネン-4-オールやリナロールなど、心身に嬉しい作用を持った芳香分子が多いこともモノテルペンアルコール類の特徴です
セスキテルペンアルコール類
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
カトロール | 肝臓再生作用、腎臓刺激作用 | ワイルドキャロット |
サンタロール | 心臓強壮作用 | サンダルウッド |
セドロール | リンパ強壮作用、うっ滞除去作用、鎮咳作用、鎮静作用 | オポポナックス、シダー |
ネロリドール | エストロゲン様作用 | ニアウリ、ネロリ |
パチュロール | 細胞組織再生作用 | パチュリー |
ビサボロール | 抗炎症作用、鎮痙攣作用 | カモマイルジャーマン |
ビリジフロロール | エストロゲン様作用、静脈強壮作用、うっ滞除去作用 | セージ、ニアウリシネオール、ロックローズ |
ジテルペンアルコール類
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
スクラレオール | エストロゲン様作用 | クラリセージ |
スクラレオールは女性ホルモンのバランスを整える働きがあり、生理前トラブルや更年期障害を癒すともされ、女性に嬉しい作用を持っています→【生理痛/生理中 記事まとめ】アロマが癒す効果的な5つの症状別レシピ、【記事まとめ】更年期障害に効果的なアロマオイルレシピと使い方
エステル類
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
アントラニル酸ジメチル | 強い抗不安作用 | プチグレン、マンダリン |
蝶酸シトロネリル | 肝臓強壮作用 | ゼラニウム |
酢酸ネリル | 胆汁分泌作用 | ネロリ、ヘリクリサム |
酢酸ベンジル | 鎮痛作用、鎮静作用、エンドロフィン作用 | イランイラン、ジャスミン |
酢酸ボルニル | 不整脈調整作用 | バルサムモミ、ブラックスプルース、ロックローズ |
サリチル酸メチル | 鎮痛作用、抗炎症作用、肝臓強壮作用、腎臓刺激作用 | ウィンターグリーン |
酢酸リナリル | 鎮静作用、誘眠作用 | クラリセージ、ネロリ、プチグレン、ベルガモット、ラベンダー |
癒しを届けてくれる香りが多いエステル類の芳香分子は、幸せホルモンとよばれる「オキシトシン」を増やしてくれるアロマオイルもあります→心と美容に効果的な「オキシトシン」を増やす8種類のアロマオイル
ケトン類
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
カルボン | 中枢神経刺激作用、覚醒作用 | キャラウェイ、スペアミント、ディル |
カンファー | 筋肉弛緩作用、呼吸中枢刺激作用、血管運動興奮作用、冷却作用、結石溶解作用 | セージ、タナセタム、ラベンダー、ローズマリー |
クリプトン | 抗ウイルス作用 | ユーカリ |
β-ジオン | 血腫抑制作用、血液凝固阻止作用 | ヘリクリサム |
ベルベノン | 胆汁分泌促進作用、粘液溶解作用、抗真菌作用、鎮咳作用 | ローズマリー |
メントン | 胆汁分泌促進作用 | アルベンシスミント、ペパーミント |
ヘリクリサムは不死の意味をもつ「イモーテル」ともよばれ、乾燥させても鮮やかな黄色の花の色や形状が変わりません。その生命力に溢れたヘリクリサムはL’Occitane(ロクシタン)のイモーテルシリーズとして販売されており、スキンケアに嬉しいアロマオイルです。またβ-ジオンは血腫抑制作用から打撲やあざにも、とても優れた効果があるとされています。
フェノール類
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
オイゲノール | 鎮痙攣作用、鎮痛作用、麻酔作用、子宮収縮作用 | クローブ、シナモン |
チモール | 抗リウマチ作用、麻酔作用 | アジョワン、オレガノ、タイム |
非常に強い抗菌作用や抗ウイルス作用を持つとされるフェノール類は、防カビや感染症対策など、幅広く活躍してくれます
フェノールメチルエーテル類
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
アネトール | 乳汁分泌促進作用、消化促進作用、去痰作用 | アニス、スターアニス、フェンネル |
チャビコールメチルエーテル | 抗アレルギー作用、消化促進作用、筋肉弛緩作用 | タラゴン、バジル |
ミリスチシン | 神経強壮作用 | ナツメグ |
テルペン系アルデヒド類
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
シトロネラール | 昆虫忌避作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用、鎮痛作用 | シトロネラ、ユーカリレモン、レモンバーム |
ゲラニアール | 抗ヒスタミン作用、抗菌作用、抗真菌作用、鎮静作用、昆虫忌避作用、抗ウイルス作用 | リトセア、レモングラス、レモンバーベナ、レモンバーム |
ネラール | 抗ヒスタミン作用、抗菌作用、抗真菌作用、鎮静作用、昆虫忌避作用、抗ウイルス作用 | リトセア、レモングラス、レモンバーベナ、レモンバーム |
※ゲラニアールとネラールを合わせてシトラールと呼ぶ
虫除けに使うのであればテルペン系アルデヒドの芳香分子を活用しましょう。手作り虫除けスプレーなどをクラフトする際にオススメ→【アロマでダニ対策】研究で効果があったアロマオイルのダニよけスプレー
芳香族アルデヒド類
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
クミンアルデヒド | 鎮静作用、麻痺作用、胆汁分泌作用、抗炎症作用、通経作用 | クミン |
ケイ皮アルデヒド | 強い抗菌作用、鎮痛作用、加温作用、催淫作用、血液凝固阻止作用 | シナモン |
ベンズアルデヒド | 抗炎症作用 | シナモン |
【酸化物・オキサイド類】
芳香分子 | 主な作用 | 芳香分子を含むアロマオイル |
1•8シネオール | 免疫調整作用、抗炎症作用 | カユプテ、カルダモン、セージ、タイム、ニアウリシネオール、ペパーミント、ユーカリ、ラヴィンツァラ、ラベンダー、レモンバーベナ、ローズマリー |
ビサボロールオキシド | 抗炎症作用、鎮痙攣作用 | カモマイルジャーマン |
1•8シネオールは呼吸器におこるアレルギー性疾患に効果的な成分で、内服薬やトローチなどとして医療現場で用いられることがあります→【花粉症のツラい症状に】アロマオイルの効果的なレシピと使い方
いかがだったでしょうか?
「【アロマオイルの作用を成分で理解する】芳香分子の効能一覧表」をご紹介させていただきました。世界中で愛されるアロマテラピーを目的に合った使い方をするためには、芳香分子を理解することが大切です。アロマオイルは産地や収穫時期によっても、芳香分子の割合が異なりますので、アロマオイルを購入する際は、芳香分子の割合をチェックしてみましょう。ご紹介した内容が皆さんのお役に立てると嬉しいです。