こんにちはアロマ薬剤師のふみやです。今回は【認知症の予防と対応に】アロマが癒す徘徊、被害妄想、暴言・暴力症状をご紹介したいと思います。認知症の代表的な症状として、もの忘れがイメージされることが多いですが、周辺症状とよばれる、徘徊して行方不明になってしまったり、物をとられたと訴える被害妄想、暴言や暴力など、介護者に負担が重くのしかかる症状が現れることがあります。
アロマテラピーの心地よい香りによって、そのような症状が軽減したとの研究報告があります。どのようなアロマオイルが効果的なのかもご紹介していきますので、ぜひ読んでみてください。
認知症の周辺症状とは
認知症の主な症状は「中核症状」と「周辺症状」に大別されます。中核症状は脳の神経細胞の障害によっておこる、時間や場所がわからなくなる見当識障害や、もの忘れなど認知機能障害です。
周辺症状とは
周辺症状は、中核症状と環境要因、身体要因、心理要因などが相互的に影響して生じる症状を意味します。外出時に道に迷って行方不明になったり、暴言や暴力などの症状があり、周辺症状は本人や家族などの負担が大きいことから、最近では周辺症状とは使わずに「行動・心理症状(BPSD)」と表されることが増えています。
主な周辺症状
- 興奮、暴言、票力
- 抑うつ、不安、無気力
- 外出時の道迷いや行方不明(徘徊)
- 睡眠障害、昼夜逆転
- 不潔行為
- 被害妄想
- 大声
- 性的逸脱行為
【認知症の予防と対応に】アロマが癒す周辺症状
メリッサとラベンダーのアロマオイル(精油)の香りや、アロマオイルを使ったトリートメントによって、認知症患者さんの周辺症状を軽減した研究結果が報告されています。ラベンダーとメリッサは、心を落ち着かせる作用やストレスを軽減させる作用が優れており、抗うつ効果も期待されて使用されることがあります。
アロマテラピーの研究
メリッサのアロマオイルを使ったトリートメントを行うことで、動揺や興奮による行動症状のスコアであるCMAIスコアが、6割の認知症患者さんで30%低下した研究や(※①)、ラベンダーの香りやトリートメントによって、周辺症状のスコアであるNPIを低下させることができた研究報告などがあります(※2)。またラベンダーのアロマオイルによって、認知症患者さんの交感神経を低下させ、副交感神経を増加させる、リラックス作用も認められています(※③)
ご紹介した研究以外にも数多くの認知症に対するアロマテラピーの研究が行われています。ぜひこちらの記事も参考にしてみてください→【記事まとめ】認知症予防に効果的!アロマの香りが癒す症状別ブレンド
【認知症の予防と対応に】アロマテラピーが効果的な理由とは
メリッサとラベンダーのアロマオイル(精油)を使うことによって、外出時に道に迷って行方不明になる徘徊や、物をとられたと訴える被害妄想、暴言や暴力などの周辺症状に対して効果が期待できます。
周辺症状は認知症患者さん本人が、もの忘れなどによって不安を抱いたり、焦りを感じることで、それをなんとかしようと努力するもののうまくいかず、周囲に攻撃的になってしまうことなどでおこります。そのような不安や焦りをアロマテラピーの心地良い香りが、優しく包み込んでくれ、心を穏やかにしてくれます。メリッサとラベンダーのアロマオイルは、不安を和らげたり、ストレスを軽減させたり、興奮を沈める作用がある代表的なアロマオイルでもありますので、認知症周辺症状に対して効果的であることは、納得がいく結果であると言えると思います。
香りと記憶の関係とは
香りによる嗅覚の刺激は「記憶」と密接に関係しているとされています。アロマテラピーによる嗅覚刺激によって、記憶をつかさどる「海馬」が刺激され、認知機能の改善や認知症の初期段階から予防する効果が期待されてきました。実際に行われたアロマテラピーの研究でも、もの忘れなどの認知機能を改善したり、時間や場所がわからなくなる見当識障害などに有効であることが発表されています。アロマテラピーのさまざまな作用は、認知症患者さんをサポートしてくれる心強い味方なのです。嗅覚に関して詳しく知りたいかたや、アロマテラピーの認知症症状に対する研究を詳しく知りたいかたは、こちらの記事を参考にしてみてください
メリッサ(レモンバーム)
「メリッサ」はレモンバームともよばれ、古代アラビア人が薬用として用いたり、ヨーロッパのハーバリストたちが優れた鎮静作用を評価して、神経衰弱や不安、興奮の緩和などに好んで使うなど、心身のケアに優れたアロマオイルです。レモンに似た清涼感のある甘い香りが、気持ちを明るく元気づけてくれます。ヨーロッパでは広く栽培されているメリッサですが、抽出する葉っぱからアロマオイル成分を少ししかとることができないため、高価なアロマオイルになります。「生活の木」や「フロリハナ」では1mlなど少量からも購入することができるのでオススメです。またメリッサはハーブティーとしても人気であり、頭をスッキリさせ、理解力や記憶力を増進させる作用もあるため、ハーブティーとして使ってみることも良いと思います。
ラベンダー
アロマテラピーの万能精油ともよばれ、多くの人に親しまれている「ラベンダー」。なかでも真正ラベンダー(ラベンダー・アングスティフォリア)の品種は、爽やかな甘酸っぱい香りが特徴で、リナロールや酢酸リナリルの成分によって、不安な気持ちやストレスを軽減する作用に優れています。周辺症状だけでなく良質な睡眠を促す作用もあるため、寝る前に香りを使ったり、寝室に香りを満たして使う方法が良いでしょう。「プラナロム」や「ニールズヤード」からはオーガニックで品質の良いアロマオイルが発売されていて、ぜひ香りを楽しんでいただきたいブランドのアロマオイルです。またニールズヤードからは、ラベンダーやカモミール、マンダリンなど、癒しのアロマオイルがブレンドされた、スプレータイプの「グッドナイトピローミスト」があり、枕やシーツなどの寝具にスプレーするだけで使うことができます。アロマテラピーを使ったことがないかたは、まずはグッドナイトピローミストを試してみても良いと思います。
いかがだったでしょうか?
「【認知症の予防と対応に】アロマが癒す徘徊、被害妄想、暴言・暴力症状」をご紹介させていただきました。みなさんやご家族、大切な人のお悩み解決に少しでもお役に立てれると嬉しいです。アロマテラピーの心地よい香りは、認知症患者さんの不安や焦り、怒りなどを優しく包み込んでくれます。ぜひオーガニックのチカラを使ったアロマテラピーも試してみてください。
研究①Aromatherapy as a safe and effective treatment for the management of agitation in severe dementia: the results of a double-blind, placebo-controlled trial with Melissa、研究②A randomised controlled trial of Lavender (Lavandula Angustifolia) and Lemon Balm (Melissa Officinalis) essential oils for the treatment of agitated behaviour in older people with and without dementia、研究③Comparison of the efficacy of aroma-acupressure and aromatherapy for the treatment of dementia-associated agitation