こんにちはアロマ薬剤師のふみやです。今回は【研究論文から考えるアロマ】自律神経を整え精神安定をもたらす香りをご紹介したいと思います。
オーガニックの有効成分が詰まったアロマオイル(精油)は、心地よい香りで人々に癒しを届けてくれるだけでなく、有効成分が心を安定させるために働きかけてくれます。日々の生活や仕事に追われたり、人間関係で悩んだりとストレスは尽きないもの。とくに現在社会においては、常に不安や緊張を抱えていたり、感情が不安定になったり、やる気がおきないなど、心の不調を訴える人が増えています。そんなときに使いたいのがアロマテラピー。海外では精神安定薬として用いられることもあるアロマテラピーは、自律神経や心のバランスを整える作用に優れています。なぜそのような作用があるのか、またオススメのアロマオイルをご紹介しますので、ぜひ読んでみてください。
なぜアロマは自律神経を整え精神安定に良いのか
アロマテラピーが自律神経や心のバランスを整える作用に優れているのは、”嗅覚が脳に与える影響”と”アロマオイルの有効成分”の2つが関係しています。
嗅覚が脳に与える影響
香りが好きだから購入する日用品を決める。普段なにげない場面で香りは人の判断に影響を与えています。衣服を柔らかくすることが目的の柔軟剤も、柔らかくする働きだけではなく、香りの好き嫌いや防臭効果で選択している人も多いのではないでしょうか?またよく知らない人だけれども生理的にイヤ!そんな経験をしたことは一度はあるはず。それは香りが嗅覚を通じて、脳に作用しているからかもしれません。
嗅覚とは
五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)でのなかで、嗅覚だけが「ダイレクトに脳に伝わる感覚器」と言われています。香りは嗅覚を通じて脳の中にある大脳辺縁系(海馬や扁桃体など)に直接伝わります。大脳辺縁系は発生学的に古い脳であり、扁桃体は人間本来の「感情」•「本能」を司っているため、好き嫌い、心地よいと感じる、不快と感じるなどの感情、睡眠欲、食欲、性欲などの本能に、香りによる刺激が大きく影響を及ぼすのです。香りが好きだから”欲しい”と思い柔軟剤を購入したり、香りでリラックスする、これらには理由があったのです。
香りと自律神経
大脳辺縁系の近くには視床下部があり、嗅覚からの香りの情報が大脳辺縁系に伝わることで、自律神経系にも影響を与えることがわかっています。視床下部は自律神経の司令塔の役割を担っていて、交感神経と副交感神経のバランスを保つために働いていますが、仕事などのストレスが過度にかかると、自律神経のバランスが崩れ、自律神経失調症などの病気を引き起こします。自律神経のバランスが乱れてしまったときに、自律神経を整える作用をもった香りを直接的に視床下部に届けてあげることは、心の不調を解消するために”理にかなった方法”と言えるのです。
アロマオイルの有効成分
アロマテラピーは日本語にすると”芳香療法”となり、香りによって心身のトラブルを解消することを意味しています。海外では医療として使用されることもあり、精神安定薬や鎮静薬としても用いられてきました。アロマテラピーはさまざまな場面で活躍しますが、世界の主要医学系雑誌を掲載している「PubMed」において、1000報以上もの研究論文が掲載されています。アロマテラピーに素晴らしい効果がある理由としては、植物のなかにある芳香成分に自律神経や心を整える作用などがあり、有効成分として医薬品にも応用されるほどの作用を持っているからと言えます。そんなオーガニックの芳香成分だけを集めたのがアロマオイル(精油)であり、アロマオイルの芳香成分を脳に届けてあげることで、心に安定をもたらしてくれるのが”アロマテラピー”なのです。
アロマテラピーが自律神経を整えたり、精神を安定させてりしてくれるのは、嗅覚を通じて脳へ直接的に、アロマオイルの有効成分を運んでくれるからなのです
自律神経を整え精神安定をもたらすアロマオイル
ここでは研究論文でも発表されている、自律神経を整えて精神安定をもたらすオススメのアロマオイルをご紹介します。
ラベンダー
アロマテラピーの万能精油ともよばれ、多くの人に親しまれているラベンダー。なかでも真正ラベンダー(ラベンダー・アングスティフォリア)の品種は、爽やかな甘酸っぱい香りが特徴で、最もラベンダーらしい香りと称されます。ストレス緩和と安眠を導く代表格でもあるラベンダーには、「リナロール」や「酢酸リナリル」が含まれており、乱れがちな自律神経を整えて、不安や緊張で揺らぐ心を穏やかに保ってリラックスさせてくれます。ヨーロッパでは鎮静剤としても用いられ、数多くの研究報告があるラベンダーですが、どのような方法がもっとも心を安定させるのかを32個の研究を統合したところ、フットバス(足浴)をおこないながらマッサージしてあげる方法が効果的であるとの報告があります。心身ケアにピッタリなラベンダーは、安眠作用があるので、就寝時や夜のリラックスタイムなどに用いることも良いでしょう。
ラベンダーはこんな人にオススメ
- 爽やかな甘酸っぱい香りに包まれたい
- 仕事などで不安や緊張が続いている
- オススメの使い方:芳香浴、アロマフットバス、アロマバス
- 香りの相性が良いアロマオイル:オレンジスイート、クラリセージ、パルマローザ
オレンジスイート
爽やかで甘くフルーティーな香りが、年齢性別問わず多くの人に好まれるオレンジスイート。普段「オレンジ」として食べているのがオレンジスイートであり、果皮から採油したものがアロマオイルとして使われています。みずみずしい甘くフルーティーな香りは、幸せホルモンとよばれる「セロトニン」を増やす作用が報告されていて、日々感じるストレスを癒して、明るく前向きな気分にさせてくれます。そんなオレンジスイートの香りは、ストレスを軽減させることで作業効率をアップさせる研究報告があり、ストレスを抱えすぎて疲れている人や、仕事にやる気がでない人の、リフレッシュにオススメのアロマオイルです。
オレンジスイートはこんな人にオススメ
- みずみずしい甘くフルーティーな香りを楽しみたい
- ストレスを感じやすい、やる気がでない
- オススメの使い方:芳香浴、アロママッサージ
- 香りの相性が良いアロマオイル:ペパーミント、ローズマリー、フランキンセンス
ベンゾイン
スマトラ島やジャワ島が原産のベンゾインは、安息香(アンソクコウ)ともよばれ、香水やコロンの原料としても人気なバニラを思わせる甘い香りが特徴的。樹皮から滲み出た樹液が固まってできた、灰褐色の樹脂を利用して作られるアロマオイルには、バニリンと呼ばれる香り成分が含まれており、「セロトニン」を増やす作用があるとされています。古くから宗教儀式にも使われてきたベンゾインの香りは、鎮静作用に優れており瞑想にも好まれて使われてきました。そのため考えすぎて疲れてしまったり、焦りや不安、イライラしてしまう気持ちなどの、ネガティブな感情に落ち着きをもたらしてくれるでしょう。
ベンゾインはこんな人にオススメ
- バニラのような甘い香りに癒されたい
- 考えすぎてしまう、自分はダメだとネガティブになる、イライラする
- オススメの使い方:芳香浴
- 香りの相性が良いアロマオイル:イランイラン、サンダルウッド、クローブ
クラリセージ
フローラルな甘みのあるハーブ調の香りで、”女性のためのハーブ”とも呼ばれるクラリセージ。女性ホルモンのエストロゲンに似た「スクラレオール」が含まれており、ホルモンバランスを整える作用に優れています。その作用によって疲れやすいなどの症状がおこる更年期障害、生理前のイライラや憂鬱な気分など、女性特有のトラブル解消に効果的。自律神経を整える作用や、安眠を促す作用もあるとされており、心にエネルギーを与えてくれるとともに、リラックスもさせてくれる香りは、心身ケアの心強い味方となってくれるでしょう。また皮脂分泌をを抑え、肌を引き締めてくれるため、スキンケアとしても人気のアロマオイルです。
クラリセージはこんな人オススメ
- フローラルな甘みのあるハーブ調の香りを感じたい
- 更年期障害や生理によって情緒不安定になる、憂鬱な気分になる
- オススメの使い方:芳香浴、アロママッサージ
- 香りの相性が良いアロマオイル:ラベンダー、柑橘系、ゼラニウム
サイプレス
イトスギ、ホソイトスギとも呼ばれ、公園や庭にも広く栽培されるサイプレス。ヒノキ科の常緑針葉樹であり、日本にあるヒノキやスギのようにウッディな香りに、少しスパイシーさが加わった爽やかな香りがします。その心地よい香りは森林浴気分を楽しませてくれ、心のリフレッシュとして活躍してくれます。サイプレスに含まれる「α-ピネン」には、副交感神経を活発にする作用があり、「セドロール」には安眠作用があります。仕事のストレスなどで、寝つきが悪い、眠りが浅いなど睡眠トラブルに悩む人にもオススメです。サイプレスには老廃物を排出する作用にも優れているため、むくみの解消やセルライト除去のために、アロママッサージとして用いることも良いでしょう。
サイプレスはこんな人にオススメ
- ウッディな香りで森林浴気分を味わいたい
- ストレスで眠れない夜がある
- オススメの使い方:アロママッサージ、アロマバス、芳香浴
- 香りの相性が良いアロマオイル:クラリセージ、ベルガモット、ジュニパー
心を整えるアロマテラピーの使い方
芳香浴
アロマディフューザーやアロマストーンなどを使って、部屋に香りを満たしてあげましょう。心が不安定なときは、深呼吸するように深く香りを吸い込むと、自律神経を整え精神安定させるために効果的です。ラベンダー、クラリセージ、サイプレスは心地よい眠りに導いてくれる作用があるため、夜のリラックスタイムや就寝時に使うことも良いでしょう。
アロママッサージ
ガラス瓶にキャリアオイル20mlをいれ、アロマオイルを4滴加えて軽く混ぜ合わせるだけで、簡単にマッサージオイルを作ることができます。アロマオイルをキャリアオイルにブレンドすることによって、アロマオイルの有効成分をしっかりと身体に浸透させることができますので、キャリアオイルと混ぜて使うようにしましょう。優しくなでるように15分以上マッサージしてあげることがオススメ。
アロマバス、アロマフットバス
ガラス容器にバスオイル(乳化剤)20mlをいれ、アロマオイルを10〜15滴加えて混ぜ合わせることで、2〜3回分のアロマバスを作ることができます。そのほかにもバスソルト(天然塩)大さじ3〜4杯に、アロマオイルを4滴加えて1回分のアロマバスソルトを作ることもオススメです。いつものお風呂にアロマを加えることで、リラックス効果が高まります。アロマバスの注意点としては、お湯に原液のアロマオイルを入れないことです。アロマオイルの原液には皮膚を刺激するものがありますので、バスオイルもしくはバスソルトで薄めるようにしましょう。バスオイルやバスソルトはプラナロム/健草医学舎、生活の木などのアロマ専門店で購入することが可能です。
アロマフットバス
大きめの洗面器、バケツ、浴槽などに40℃のお湯を注ぎ、バスオイルなどで希釈したアロマオイルを加え、よくかき混ぜるだけで準備が完了です。私のおすすめはバスオイル5mlに、アロマオイル滴を加えるブレンドですが、ご自身の好きな配分でももちろん大丈夫です。足をくるぶしぐらいまでお湯につけ、15分間アロマフットバスを楽しみましょう。お湯の温度が下がってきたら、熱いお湯を足して調整してみてください。
いかがだったでしょうか?
「【研究論文から考えるアロマ】自律神経を整え精神安定をもたらす香り」をご紹介させていただきました。オーガニックの有効成分が詰まったアロマオイルを、嗅覚を通じて脳に届けてあげることが、自律神経と心を整えるために大切になります。日々の生活や仕事で疲れを感じる心には、良質なアロマオイルを使ってあげましょう。簡単な方法でもアロマテラピーは使えますので、ぜひ試してみてください。ご紹介した内容が皆さんのお役に立てると嬉しいです。
参照研究:①The best route of administration of lavender for anxiety: a systematic review and network meta-analysis.、②香りがもたらす、心身機能への効果、③Psychological effects of aromatherapy on chronic hemodialysis patients、④天然匂い物質“セドロール”の生理学的作用と アロマセラピーへの応用